kidnap

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“みてたよ”


・幼少期キャメルとクロコダイル

・前スレ勘の鋭いキャメルレスから

・首は刎ねません




 公園という名の原っぱに1つだけある、おそらく誰かの手作りだろう簡素な板切れとロープで出来たブランコが揺れている。

 まだ遊びたいと泣きわめく子供に兄らしい少年が文句をつけながらおんぶをして去っていく。まだそんなに遅い時間じゃないが冬は太陽が沈むのが早いからか人気はすっかりなくなっていた。

「泣けば誰かくるなんて楽で良いよな」

 ベンチで座って本を読んでいたクロコダイルは辺りを見渡すと使う者がいなくなったブランコにそっと座った。


 次の島へ行く為一日限定の仕事を見つけて張り切るキャメルにクロコダイルが提案したのは今日の朝の出来事。

「おれも仕事する」

「嘘が見抜ける位には大きくならないと駄目だよ」

「見抜ける」

「絶対だめ。もう行くけど誰か来ても開けないように出かける時は宿の人に何処行くか伝えて。人がいない場所には行かないこと。あと豆鉢に植えたキャンディの種に水やるように」

「わかってる」

 そんなやり取りをしてキャメルが仕事に行った暫くあと、壁の薄い隣室が何やら騒がしくなったので昼には人が多く集まる公園に行き一人静に読書の時間を楽しんでいたのだがこの寒さではそろそろ帰った方が良さそうだ。

 兄はクロコダイルに服を作ることがマイブームらしくモコモコの服で暖かい。マフラーを結び直して誰も背中を押してくれないブランコを揺らしていたら

「坊や」

 声をかけられて咄嗟に立ち上がる。

「あなたお昼に通りかかった時も公園にいたでしょう?お家に帰らないと危ないわよ」

 優しく声をかけたのは死んだ母親と同じ年頃の女だった。

 買い物カゴの中には今日晩御飯に使われるのだろう野菜やらなにやらが入っている。どうやら怪しい人間じゃなさそうだと警戒を解くとクロコダイルの視線に合わせてしゃがんで

「誰か待ってるの?」

 と尋ねられる。日は沈み始めていて夕日が女のブロンドの髪をキラキラ反射させていた。敵意の無いしかも女相手に牙を剥くのはおかしな話だと対応に困りつつクロコダイルは心配する必要は無いことと兄が迎えに来るのを待ってるだけだと伝えることにした。

「だいじょう」


「クロ」


 静かなのに重く響く声。

 弟とそう変わらない子供のくせに大人の様な冷たい気配。

 本人に向けられた訳ではないのに突き刺さる殺気に震える。

 クロコダイルが動けないでいると青褪めた眼の前の女が小さく悲鳴をあげて尻もちをついた。手首から血が流れて手の中から何かが落ちるのが一瞬見えたが手を引っ張られてしまいそのまま公園を出てしまう。

「待たせてごめんね。帰るよ」

「な、なにして⋯⋯あの人は」

 繋いでいる手の力が強くて怖くて言葉の続きが出ないまま宿の自分達の部屋に入って初めてキャメルがクロコダイルの方を見た。

 真剣な顔であちこち触って漸くホッとした顔をする。

「怪我はないね。良かった」

「なに、なに言ってるんだよ!街で過ごす時は騒ぎ起こさない様におれ⋯⋯おれ言っただろ!」

 つっかえながら怒鳴る弟の怒りと困惑が通じているのかいないのかキャメルは目を丸くした。

「だってクロが危なかったから」

「海賊でもない女に何言ってんだよ⋯⋯!どうするんだどっかに駆け込まれでもしたら!今夜出る船なんてねェし逃げる方法が」

「何処にも訴えれないでしょう」

「なんでだよ」

「勘」

「あのなぁ!」

「大丈夫、安心して」

「⋯⋯⋯⋯なんで」

 声が震えそうになったが兄に怖がってると知られなくて無理矢理おさえつける。

「眼がダメだった。それだけ」

 微笑んだキャメルにそれ以上言い返すことを躊躇っている間にベットに寄りかかって武器の手入れを始めてしまう。こうなるともうどう話しても無駄だ。彼の勘を信じるしかない。

 クロコダイルはそれでも離れるのは嫌だったし癪だった。隣に無理矢理座ると夕食の時間までキャメルに寄りかかって寝たふりをするとさっき人を斬った手が今度は優しく触れて、気づかない内に本当に眠りについていた。

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